ネパール地域総合開発プロジェクトの終了時評価が行われました
2022年2月より開始したネパール地域総合開発プロジェクトは、4年6か月という事業期間を経て、今年の8月をもって終了します。
プロジェクト終了に先立ち、ネパールで活動するNGOを管轄する政府機関「社会福祉評議会」が任命した4名の外部評価団により、今年5月から6月にかけて終了時評価が実施されました。その一環として、評価団はFIDRのプロジェクト地を訪問しました。
評価団は、3日間で、ソルクンブ郡ネチャサリヤン村ならびにオカルドゥンガ郡チサングガディ村を車でまわり、それぞれの村長、副村長、区長、農業・保健・教育担当官、保健ポスト(診療所)職員、校長、地域住民などにインタビューを行いました。
農業における変化について、地区の区長やため池メンバーは次のように話してくれました。
「プロジェクトが始まる前は、雨季しか野菜をつくれず、家族の分をつくるので精一杯でした。でもFIDRが推進した農業用ため池とトンネルハウスを導入してからは乾季も農業生産ができるようになった上、野菜を販売して収入も得られるようになりました。」
「以前は海外へ出稼ぎに行くことを検討していました。でも、農業用ため池とトンネルハウスを通じて農業で収入を得られるようになり、家族とここで一緒に暮らしていくことができるようになりました。今朝もちょうど近くの集落の若者2人が海外出稼ぎを考えていたので、“農業を本格的にやってみたら”と勧めたところです。」

農業用ため池グループへインタビューする様子
保健分野では、次のような声が上がりました。
「住民にとって一番身近な医療施設である保健ポスト(診療所)14か所にFIDRは医療機器・器具を供与してくれました。おかげで住民たちは、簡易な健康診断を、歩いて行ける保健ポストで受けられるようになりました。」(副村長)
「保健分野の成果が目に見える形で現れるまでには4~5年かかるでしょう。それでも、住民たちはFIDRの研修で学んだことを暮らしの中で日々実践しています。たとえ全てを覚えていなくても、1つでも健康に繋がる生活習慣が根付けば、このような遠隔地では十分に意味あることです。」(保健センター職員)
また、衛生に関して、区長は「貯水タンクが建設される前は、お客さんに飲み水を提供できない集落もありました。でもいまは、おかげさまで年間を通じて飲み水に困らなくなりました。」と話しました。
教育分野では、次のような声も聞かれています。
「これまで子どもたちに音楽という科目をどう教えたらよいのかわかりませんでした。自分も音楽の授業を受けた経験がないので、教科書の内容すら理解できませんでした。FIDRによる教員研修で音楽科目について学び、ようやく児童たちに音楽を教えることができるようになりました。いまでは児童のみならず保護者も興味を示しています。」(教員)
「以前は森から出てきた野生の動物が学校の敷地に侵入して、子どもたちが怪我をしたり、動物の排泄物に触れてしまったりと、安全面でも衛生面でも懸念がありました。でもFIDRが学校の敷地を囲むフェンスをつくってくれたおかげで、子どもたちが安心して学べるようになりました。」(校長)

学校関係者へのインタビューの様子
(奥の敷地の淵に見えるのが、子どもたちの転落を防止するフェンス)
さらに、こうした地域住民の暮らしの変化に加え、評価団がプロジェクトの進め方について尋ねたところ、地域の行政職員から、母親たちが集まって活動する保健グループのメンバー、貯水タンク利用者委員会まで、様々な立場の住民が、まるでFIDRの職員であるかのように、FIDRが大切にしてきたことに触れながら語ってくれました。
「私たちはFIDRからたくさんのことを学びました。例えば、これまでは一部の人の意見だけで物事が決まることが多々ありましたが、FIDRは、コミュニティ開発プロジェクトであることを重要視し、活動を実施する前に事前協議としてすべての関係者を集めて、話し合いの場を設けます。そこで一人ひとりの意見を持ち寄り、地域として何を優先すべきかを皆で考えるのです。その結果、関係者全員が同じ方向を向き、本当に必要なニーズを見極められるようになりました。FIDRと共に活動を行ったことで、コミュニティの発展にはすべての関係者が意思決定に参加することが大切なのだと学びました。」
保健ポスト(診療所)職員は、この「FIDRが大切にしてきたこと」を顕著に表す例として、次のことを話してくれました。
「保健ポスト職員を対象とした研修内容を検討する事前協議で、『避妊インプラントの施術方法』と『口腔衛生』の2つが候補に挙がりました。その際も、FIDRは『これはコミュニティ開発のプロジェクトだから』と、コミュニティに属する全員にとって重要な口腔衛生を選択しました。さらに、口腔衛生に対する地域のニーズの高さを踏まえ、保健ポスト職員だけでなく、保健ボランティア、地域住民、さらには子どもたちにも、学ぶ機会を提供することにしたのです。その結果、いまでは口腔衛生に関する知識は、コミュニティ全体で共有される『みんなの知識』となりました。私たちは、コミュニティを発展させるとはこういうことなのだと、FIDRから学びました。」

保健ポストのボランティアや、母親保健グループメンバーへの
インタビューの様子
フィールド調査を終えた後、評価団のチームリーダーは「このプロジェクトをみんなが高く評価している。どのプロジェクトでも必ずこうした声を聞けるわけではない。素晴らしい。」と声をかけてくれました。さらに、行政職員や住民たちから寄せられた「FIDRがこれからもここでプロジェクトを続けられるよう、政府に私たちの声を届けてほしい」という願いを受けとめ、首都カトマンズへ戻った後、ネパール政府に提出する終了時評価報告書にその思いをしっかり記してくださいました。
プロジェクトは終わっても、そこに暮らす人々の生活はこれからも続いていきます。
プロジェクト終了後も、このプロジェクトで生まれたポジティブな変化がコミュニティの中で少しずつ積み重なり、人々の暮らしをより良いものにしていくことを願っています。