FIDR(ファイダー)は、開発途上国の子どもたちの支援と緊急援助を行う、国際協力NGOです。

給食で子どもに笑顔と健康を
カンボジア給食支援
2018年7月23日

アジア栄養士会議に参加しました

「カンボジアにおける学齢期の子どものための食生活指針」について発表するFIDRカンボジア事務所のキムロン職員

7月6〜8日、香港で開催されたアジア栄養士会議にFIDRスタッフが参加し、昨年完成した「カンボジアにおける学齢期の子どものための食生活指針」について発表しました。

この会議は4年に一度開催され、アジア栄養士連盟に加盟している12か国(日本、台湾、香港、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、パキスタン、シンガポール、タイ、オーストラリア)の栄養士や管理栄養士、研究者などが、様々な研究発表や事例報告を行っています。

FIDRの発表を聴いた方々からは、カンボジアの現状や、子どもたちの栄養摂取状況についての質問がいくつも寄せられました。また、カンボジアに栄養士がいないことや、学校給食などがないことを初めて知り、驚いていた方もいました。 現在、栄養士会がないカンボジアは、アジア栄養士連盟に加盟しておらず、カンボジアからの参加者やカンボジアでの栄養に関する活動報告も限られています。そのため、今回の発表は、他国の栄養士や栄養学研究者にカンボジアの現状を伝える貴重な機会となりました。

さらに、この会議には、FIDRが支援する国立小児病院栄養科から医師2名も参加しました。
医師たちは、臨床栄養の分野におけるテーマ発表を数多く聴講しましたが、どれも興味深い内容ばかりで学びが多かったようです。しかし、これまで栄養学(特に臨床栄養学)を学んだ経験がないため、専門用語など理解するのが難しく、自らの知識や経験が十分でないと改めて感じたといいます。

それでも会議の終了後、彼女たちは、「カンボジアは、他国に比べたらとても遅れているけれど、誰かが始めないと何も実現しない。私たちの世代が何かを始めないといけない」と話していました。医師たちの中で、「カンボジアでも、栄養学や栄養士制度の設立に繋がる土台を創っていきたい」という思いが増したようです。彼女たちの今後の活躍に期待したいです。

アジア栄養士会議に参加したFIDRキムロン職員(左端)、国立小児病院栄養科ダネイ医師(中)とソピアック医師(右端)

 
2018年5月31日

「食生活指針」の学校への普及がはじまりました

4月24日、カンボジア北部プレアヴィヒア州のコム・トメイ小学校で開かれた「料理コンテスト」の機会に、「学齢期の子どもたちのための食生活指針」の普及活動を行いました。

コンテストは、カンボジア教育省保健課とWFP(国連世界食料計画)が共催したもので、WFPが給食支援を行う学校のボランティア調理員、学校長、州や郡の教育局、学校保健課、WFPが出席しました。
調理員が料理をしている間、FIDRスタッフは学校長に向けて、フードピラミッドが描かれたポスターなどの教材を使い食生活指針を紹介しました。この指針が健康的な食習慣とライフスタイルづくりに役立つことを説明するとともに、自校の教師や子どもたちに広めていくよう働きかけました。

「カンボジア政府、国連機関とNGOが一緒になって、食生活指針を子どもたちに広める機会をもつことは、とても重要で意義のあることです」と、学校保健課課長のキムソティアヴィ氏は評価していました。

校長先生たちは、学校に戻ると早速、教室の壁に教材のポスターを掲示しました。
      
ある学校では、数名の子どもたちがポスターを囲み、フードピラミッドに描かれている食べ物についておしゃべりをしていました。ポスターには、「毎日、全ての種類の食べ物をバランスよく食べましょう」、「小魚や牛乳、乳製品など、カルシウムが豊富な食品を食べましょう」、「多くの果物と野菜を規則正しく食べましょう」などのメッセージが書いてあります。
ポスターは、「とても、おもしろい」と子どもたちに好評で、食事に関するメッセージもきちんと伝わっていました。

           
2018年5月25日

カンボジア版食生活指針がFAOのサイトに掲載されました

世界で100か国以上がそれぞれの食の文化や一般に用いられる食材に基づいて「食生活指針(食事バランスガイド)」を設定しています。各国の食生活指針はFAO(国連食糧農業機関)のウエブサイトに一覧で掲載されています。

カンボジアは食生活指針が長く不備の状態でしたが、保健省の要請のもと当事業により昨年ようやく完成し、保健省の認定を受けることができました。このたび、その「カンボジアの学齢期の子どもたちのための食生活指針」がFAOのサイトに掲載され、リストにカンボジアの国旗が追加されました。これは、この指針が調査と解析という科学的根拠に基づき、国際的に定められたガイドラインに沿って作成されたものとして認められたことを意味します。

食生活指針の策定はカンボジアにとって初めてのことで、まだまだパーフェクトなものとは言えませんが、カンボジアが栄養改善の分野において一歩前進したことは確かです。これを機にFIDRは保健省や教育省、また他の関係機関と積極的に協働ネットワークを広げ、子どもの栄養改善という大きなテーマに取り組んでいきます。

国際連合食糧農業機構(FAO)のカンボジアページ

2018年3月20日

栄養に関する指導用教材を制作しています

4月より、昨年カンボジア保健省から認定を受けた学齢期の子どもたちのための「食生活指針」を、実際に全国の学校やコミュニティに広めていく活動を開始します。

「食生活指針」の普及活動において、重要になってくるのは教材です。すでに、ポスター、リーフレットや冊子は、FIDRスタッフをはじめ、専門家や有識者の方々と何度も議論を重ねて完成しましたが、今度はこれらを使って子どもたちを指導する学校の先生や地域の保健センター職員、保護者などを対象にした指導用教材(指導マニュアルのようなもの)の開発に取り組んでいます。

現在カンボジアには栄養士がいないばかりか、学校で栄養について学ぶ機会は皆無に等しいです。そのため、この「食生活指針」は子どもたちだけでなく学校の先生にとっても初めて触れる内容となります。指導用教材には指針の内容のみならず、基本的な栄養の知識や指導にも役立つようなトピックも含まれるように作成を進めています。FIDRのカンボジア人スタッフにとっても初めて知るようなことが含まれているので、皆で学びながらの作業です。

スタッフミーティングの様子

教材に掲載する視覚情報もとても重要であるため、どのような写真が必要なのかもスタッフで話し合いました。普段カンボジアの学校で使用されている教科書にはあまり写真が含まれておらず、白黒の挿絵がある程度です。子どもたちに一層興味を持ってもらう教科書にするためにも、これまで作成したリーフレットや冊子には、できるだけたくさんの写真や色を使うことを意識してきました。今度の教材は主に大人に向けてのものですが、なるべく内容を分かりやすくするため、積極的に写真も取り入れていきたいと思っています。

また、ポスター、リーフレットや冊子の時と同じように、使用する写真はプロの方に撮影をお願いしています。特に食材や料理の写真を多く撮影してもらうため、今回も念入りに事前準備と打ち合わせを行った上で撮影に挑みました。以前の反省点が活かされたのか、今回はスタッフも要領を得ていて、手際よくスムーズに撮影が終わりました。

これからも、ますます皆で協力し合いチーム一丸となって、教材作成の作業を続けていきたいと思います。

撮影のための事前打ち合わせ

実際の写真撮影の様子

2017年12月4日

食生活指針の完成発表セミナーを開催しました

当日参加された皆さまと

3年余りに及び、FIDRとカンボジアの関連省庁、国際機関やNGOが一緒になって協議して開発に取り組んできた、カンボジアにおいて初めてとなる学齢期の子どもたちのための食生活指針(カンボジア版「食事バランスガイド」)がついに完成しました。この食生活指針はカンボジア保健省で正式に認定され、子どもたちの栄養摂取のための新しいガイドラインとなりました。ここに至るまでには、本当に様々な課題やクリアしなければいけない問題があり、頭を抱える日々もたくさんありましたが、無事に完成発表セミナーを開催できたことは、FIDRスタッフにとっても非常に嬉しく、誇りに思う出来事でした。

関連省庁の代表者とのパネルディスカッション

セミナー当日(11月20日)は、カンボジア保健省や教育省をはじめ、地方からも関係者が駆けつけてくださり、多くの方々に完成のご報告をすることができました。また、これまで技術的なサポートをしてくださっていた青森県立保健大学の吉池信男教授と草間かおる准教授にもお越しいただき、日本での食生活指針の実践事例や活用方法に関してお話いただきました。カンボジアの人々(特に地方の方)にとって、日本の大学教授からお話を聞く機会はとても珍しく、熱心にお話を聞いていた様子が印象的でした。

日本の事例についてお話される吉池教授(写真左)

それ以外に、食生活指針の教材作成において資金的にご支援いただいた、京都モーニングロータリークラブのメンバーの方々にもご参加いただきました。FIDRが取り組んでいるプロジェクトの現場を実際に見ていただくことで、より活動の内容等をご理解いただくことができ、現地のスタッフやカンボジアの人々との距離も一層縮まったのではないかと思います。我々スタッフにとっても、様々な人々によって支えられていることを改めて実感する機会となり、感謝の気持ちが一層強くなりました。

また、このセミナーの様子は、カンボジアのテレビ局に全国版ニュースとして取り上げられました。これをきっかけに、カンボジアの多くの人々に関心を持ってもらえたら嬉しい限りです。

今回開発した食生活指針(カンボジア版「食事バランスガイド」)は、完成したから終了するわけではなく、これらを普及させていくという最も大切なプロセスが待っています。

今後、カンボジアの小学校で「保健」が正式な教科となる予定であり、日本の保健や家庭科の教科書に「食事バランスガイド」が掲載されているように、この食生活指針もカンボジアの教科書に掲載されることになっていくことと思います。しかしながら、現在のカンボジアには、その教科を教えられる栄養教諭や栄養士がいないため、栄養教育や食育の取り組みはまだ行われていません。

そのため当面はカンボジアの学校で栄養教育を進めるにあたり、教諭に向けた研修やトレーニングも行っていくことが必要とされており、FIDRはそれらのサポートを行っていく予定です。

完成した食生活指針とアンコールワットをかたどったフードピラミッド

2017年6月26日

カンボジアの子どもたちの健康のために
〜「食生活指針」完成まであと一歩〜

保健省や教育省、WHOや国立保健研究所などから構成されるワーキンググループ。フードピラミッドのデザインやスローガンの文言を巡って白熱した議論がなされました

これまで「カンボジア給食支援プロジェクト」でご報告していた学齢期の子どもたちのための食生活指針(カンボジア版「食事バランスガイド」)の開発とその普及は、これまでのプロジェクトから独立し、2017年4月から「栄養教育普及プロジェクト」として取り組むことになりました。

フードベースの食生活指針(英語名Food-Based Dietary Guidelines =FBDG)は、健康的な食生活を送るための誰でもわかりやすいシンプルなスローガンと、何をどのくらい食べたらよいのかを示すフードピラミッドなどで構成されています。1992年に国連機関のWHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の共催で開かれた国際栄養会議において採択された『世界栄養宣言とその行動計画』には、“各国政府はそれぞれの自国民のために適切な食生活と生活習慣を促進する食事指針を定めるべきである”と書かれており、各国の食事指針が紹介されているFAOの公式ウェブサイトでも、アジア太平洋地域に加盟している29か国のうち、先進国を中心とした17か国で定められていることがわかります。

しかし、その中にカンボジアの名前はありません。栄養士という職業がなく養成機関もないカンボジアでは、科学的根拠のもとに食習慣や栄養上の課題を引き出し、その上に検証を繰り返して策定しなければならない食生活指針は、それだけの専門技術、労力、時間、そして資金が必要であるため、ずっと後回しにされてきました。

FIDRは、2008年からカンボジア国立小児病院での病院給食と栄養管理システム導入および人材育成に力を注ぎ、同国の保健省とも良好な関係を築いてきました。その信頼もあり、2013年に保健省から食生活指針の策定に力を貸してほしいとの要請を受けました。

食生活指針をつくるには、その国で定められた、一日にどのくらいの栄養素を取るべきかを示す「推奨栄養所要量」(食事摂取基準)が必要です。同国ではそれすら存在していなかったため、まずは「推奨栄養所要量」を策定するため、対象人口の食事摂取状況と栄養状態のリサーチからはじめ、2014年より全国調査を実施しました。

カンボジアとしてだけでなく、FIDRとしても全てが初の試みであるため、一つ一つ日本人専門家のアドバイスを受けながら着実に進めてきました。(参考:過去の記事)その他にもカンボジア版「食事バランスガイド」を普及させるため、できるだけわかりやすいポスターやパンフレットの教材を作り、都市部や農村部の小中学生対象にパイロット調査を行った他、ワーキンググループメンバーや他団体の有識者などの意見もうかがいながら、何度も手直しを繰り返しました。

食生活指針の策定に関わる皆が「よし、これでいこう!」と合意に至るまで本当に大変な道のりでしたが、プロジェクト開始から3年の道のりを経て、保健省に提出するまであと一歩というところに来ています。

「あともう一歩、がんばろう!」
プロジェクトチームのメンバーたちと励まし合いながら取り組んでいます。