FIDR(ファイダー)は、開発途上国の子どもたちの支援と緊急援助を行う、国際協力NGOです。

給食で子どもに笑顔と健康を
カンボジア給食支援
2017年12月4日

食生活指針の完成発表セミナーを開催しました

当日参加された皆さまと

3年余りに及び、FIDRとカンボジアの関連省庁、国際機関やNGOが一緒になって協議して開発に取り組んできた、カンボジアにおいて初めてとなる学齢期の子どもたちのための食生活指針(カンボジア版「食事バランスガイド」)がついに完成しました。この食生活指針はカンボジア保健省で正式に認定され、子どもたちの栄養摂取のための新しいガイドラインとなりました。ここに至るまでには、本当に様々な課題やクリアしなければいけない問題があり、頭を抱える日々もたくさんありましたが、無事に完成発表セミナーを開催できたことは、FIDRスタッフにとっても非常に嬉しく、誇りに思う出来事でした。

関連省庁の代表者とのパネルディスカッション

セミナー当日(11月20日)は、カンボジア保健省や教育省をはじめ、地方からも関係者が駆けつけてくださり、多くの方々に完成のご報告をすることができました。また、これまで技術的なサポートをしてくださっていた青森県立保健大学の吉池信男教授と草間かおる准教授にもお越しいただき、日本での食生活指針の実践事例や活用方法に関してお話いただきました。カンボジアの人々(特に地方の方)にとって、日本の大学教授からお話を聞く機会はとても珍しく、熱心にお話を聞いていた様子が印象的でした。

日本の事例についてお話される吉池教授(写真左)

それ以外に、食生活指針の教材作成において資金的にご支援いただいた、京都モーニングロータリークラブのメンバーの方々にもご参加いただきました。FIDRが取り組んでいるプロジェクトの現場を実際に見ていただくことで、より活動の内容等をご理解いただくことができ、現地のスタッフやカンボジアの人々との距離も一層縮まったのではないかと思います。我々スタッフにとっても、様々な人々によって支えられていることを改めて実感する機会となり、感謝の気持ちが一層強くなりました。

また、このセミナーの様子は、カンボジアのテレビ局に全国版ニュースとして取り上げられました。これをきっかけに、カンボジアの多くの人々に関心を持ってもらえたら嬉しい限りです。

今回開発した食生活指針(カンボジア版「食事バランスガイド」)は、完成したから終了するわけではなく、これらを普及させていくという最も大切なプロセスが待っています。

今後、カンボジアの小学校で「保健」が正式な教科となる予定であり、日本の保健や家庭科の教科書に「食事バランスガイド」が掲載されているように、この食生活指針もカンボジアの教科書に掲載されることになっていくことと思います。しかしながら、現在のカンボジアには、その教科を教えられる栄養教諭や栄養士がいないため、栄養教育や食育の取り組みはまだ行われていません。

そのため当面はカンボジアの学校で栄養教育を進めるにあたり、教諭に向けた研修やトレーニングも行っていくことが必要とされており、FIDRはそれらのサポートを行っていく予定です。

完成した食生活指針とアンコールワットをかたどったフードピラミッド

2017年6月26日

カンボジアの子どもたちの健康のために
〜「食生活指針」完成まであと一歩〜

保健省や教育省、WHOや国立保健研究所などから構成されるワーキンググループ。フードピラミッドのデザインやスローガンの文言を巡って白熱した議論がなされました

これまで「カンボジア給食支援プロジェクト」でご報告していた学齢期の子どもたちのための食生活指針(カンボジア版「食事バランスガイド」)の開発とその普及は、これまでのプロジェクトから独立し、2017年4月から「栄養教育普及プロジェクト」として取り組むことになりました。

フードベースの食生活指針(英語名Food-Based Dietary Guidelines =FBDG)は、健康的な食生活を送るための誰でもわかりやすいシンプルなスローガンと、何をどのくらい食べたらよいのかを示すフードピラミッドなどで構成されています。1992年に国連機関のWHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の共催で開かれた国際栄養会議において採択された『世界栄養宣言とその行動計画』には、“各国政府はそれぞれの自国民のために適切な食生活と生活習慣を促進する食事指針を定めるべきである”と書かれており、各国の食事指針が紹介されているFAOの公式ウェブサイトでも、アジア太平洋地域に加盟している29か国のうち、先進国を中心とした17か国で定められていることがわかります。

しかし、その中にカンボジアの名前はありません。栄養士という職業がなく養成機関もないカンボジアでは、科学的根拠のもとに食習慣や栄養上の課題を引き出し、その上に検証を繰り返して策定しなければならない食生活指針は、それだけの専門技術、労力、時間、そして資金が必要であるため、ずっと後回しにされてきました。

FIDRは、2008年からカンボジア国立小児病院での病院給食と栄養管理システム導入および人材育成に力を注ぎ、同国の保健省とも良好な関係を築いてきました。その信頼もあり、2013年に保健省から食生活指針の策定に力を貸してほしいとの要請を受けました。

食生活指針をつくるには、その国で定められた、一日にどのくらいの栄養素を取るべきかを示す「推奨栄養所要量」(食事摂取基準)が必要です。同国ではそれすら存在していなかったため、まずは「推奨栄養所要量」を策定するため、対象人口の食事摂取状況と栄養状態のリサーチからはじめ、2014年より全国調査を実施しました。

カンボジアとしてだけでなく、FIDRとしても全てが初の試みであるため、一つ一つ日本人専門家のアドバイスを受けながら着実に進めてきました。(参考:過去の記事)その他にもカンボジア版「食事バランスガイド」を普及させるため、できるだけわかりやすいポスターやパンフレットの教材を作り、都市部や農村部の小中学生対象にパイロット調査を行った他、ワーキンググループメンバーや他団体の有識者などの意見もうかがいながら、何度も手直しを繰り返しました。

食生活指針の策定に関わる皆が「よし、これでいこう!」と合意に至るまで本当に大変な道のりでしたが、プロジェクト開始から3年の道のりを経て、保健省に提出するまであと一歩というところに来ています。

「あともう一歩、がんばろう!」
プロジェクトチームのメンバーたちと励まし合いながら取り組んでいます。