FIDR(ファイダー)は、開発途上国の子どもたちの支援と緊急援助を行う、国際協力NGOです。

給食で子どもに笑顔と健康を
カンボジア給食支援
2017年8月28日

カンボジアの子どもたちの健康のために
〜「食事摂取頻度調査票」が完成しました〜

完成した「食事摂取頻度調査票」とFIDRカンボジアスタッフ(右から2人目が甲斐専門家)

2017年4月から「栄養教育普及プロジェクト」として、学齢期の子どもたちのための食事摂取基準『食事バランスガイド』の開発とその普及に取り組んできました。FIDRとして初めての経験であるだけでなく、カンボジアとしても経験がないため、日本人専門家のアドバイスを受けながら一歩一歩進めてきました(参考:過去の記事)

そしてこの度、「食事摂取頻度調査票」がついに完成しました。これはどんなものなのか、カンボジア事務所スタッフの甲斐栄養専門家に解説してもらいました。

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子どもたちに、よりよい食事指導や栄養・健康教育を行うためには、彼らの栄養状態と「何をどのくらい食べているのか」という情報を正しく把握することが必要不可欠となります。一般的に上記のような情報の収集には食事調査というものが行われるのですが、その調査方法にも色々あり、それぞれメリットやデメリットが存在します。特に、詳細な記録を収集するとなると対象者への負担も大きく、多くの対象者の記録を収集することが難しくなります。また、食習慣の実態を把握するためにはある一定期間にどのくらい食べているかというデータも必要となってきます。そこで、対象者が気軽に協力でき、効率的な調査を実施するために、食事摂取頻度調査票(FFQ)が用いられています。

食事摂取頻度調査票(FFQ:Food Frequency Questionnaire)とは、「過去の一定期間中にリストに挙げられた食品の摂取頻度を聞くこと」で、対象者の平均的な食事や摂取している栄養素を把握する調査票です。これは、食習慣と病気の関係を調べる研究や、日本をはじめ、様々な国で食事指導をする目的で活用されています。その地域にあわせたFFQが存在する国とそうでない国がありますが、今までカンボジアには独自のFFQがありませんでした。そのため、カンボジアの子どもたちの食習慣の実態を正確に把握するため、先ずはこの国で食べられている食品項目で構成されたFFQを開発する必要がありました。

FIDRは、2016年7月より日本人専門家の協力を得ながら、カンボジアで初めてとなる、学齢期の子どもに合わせた独自のFFQの開発を始めました。まずは、子どもたちが日常的に食べているとされる食品を取り上げ、食品グループごとに分類して分析した後、目的とする栄養素の摂取量が推測できる食品リストを作成しました。その後は微調整を加えて調査票を完成させ、昨年12月に調査を行うことができました。

この開発に係わったFIDRカンボジア事務所のカンニャ職員によると、最も苦労したところは「質問内容の構成」だったそうです。そもそも、「何をどのくらい食べたか」という認識が個人によって差があることと、対象が子どもということから、わかりやすく食品ごとにおおよその量が推定できる写真集を作成する必要があった他、基準となるポーションサイズ(一度に食べる量)の設定が非常に難しかったそうです。

今後、このFFQはカンボジアで子どもの食事調査をする際に使用することができる他、対象者が大人になった場合でも、これを参考に新たなFFQの開発が可能になります。このFFQを使用して定期的に調査することで、多くのカンボジアの子どもたちの栄養状態を容易に把握することができ、将来の栄養・健康指導に役立てることができるでしょう。FIDRにて、その大きな一歩を踏み出せたことを、プロジェクトチーム一同非常に嬉しく思っています。

FFQの開発には、プロジェクト・アドバイザーの草間かおる専門家(青森県立保健大学准教授)および青森県立保健大学大学院の研究生の方にご協力いただいています

2017年6月26日

カンボジアの子どもたちの健康のために
〜「食事摂取基準」完成まであと一歩〜

保健省や教育省、WHOや国立保健研究所などから構成されるワーキンググループ。フードピラミッドのデザインやスローガンの文言を巡って白熱した議論がなされました

これまで「カンボジア給食支援プロジェクト」でご報告していた学齢期の子どもたちのための食事摂取基準(食事バランスガイド)の開発とその普及は、これまでのプロジェクトから独立し、2017年4月から「栄養教育普及プロジェクト」として取り組むことになりました。

食事摂取基準(英語名Food-Based Dietary Guidelines =FBDG)は、健康的な食生活を送るための誰でもわかりやすいシンプルなスローガンと、何をどのくらい食べたらよいのかを示すフードピラミッドなどで構成されています。1992年に国連機関のWHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の共催で開かれた国際栄養会議において採択された『世界栄養宣言とその行動計画』には、“各国政府はそれぞれの自国民のために適切な食生活と生活習慣を促進する食事摂取基準を定めるべきである”と書かれており、各国の食事摂取基準が紹介されているFAOの公式ウェブサイトでも、アジア太平洋地域に加盟している29か国のうち、先進国を中心とした17か国で定められていることがわかります。

しかし、その中にカンボジアの名前はありません。栄養士という職業がなく養成機関もないカンボジアでは、科学的根拠のもとに食習慣や栄養上の課題を引き出し、その上に検証を繰り返して策定しなければならない食事摂取基準は、それだけの専門技術、労力、時間、そして資金が必要であるため、ずっと後回しにされてきました。

FIDRは、2008年からカンボジア国立小児病院での病院給食と栄養管理システム導入および人材育成に力を注ぎ、同国の保健省とも良好な関係を築いてきました。その信頼もあり、2013年に保健省から食事摂取基準の策定に力を貸してほしいとの要請を受けました。

食事摂取基準をつくるには、その国で定められた、一日にどのくらいの栄養素を取るべきかを示す「推奨栄養所要量」が必要です。同国ではそれすら存在していなかったため、まずは「推奨栄養所要量」を策定するため、対象人口の食事摂取状況と栄養状態のリサーチからはじめ、2014年より全国調査を実施しました。

カンボジアとしてだけでなく、FIDRとしても全てが初の試みであるため、一つ一つ日本人専門家のアドバイスを受けながら着実に進めてきました。(参考:過去の記事)その他にも食事摂取基準を普及させるため、できるだけわかりやすいポスターやパンフレットの教材を作り、都市部や農村部の小中学生対象にパイロット調査を行った他、ワーキンググループメンバーや他団体の有識者などの意見もうかがいながら、何度も手直しを繰り返しました。

食事摂取基準の策定に関わる皆が「よし、これでいこう!」と合意に至るまで本当に大変な道のりでしたが、プロジェクト開始から3年の道のりを経て、保健省に提出するまであと一歩というところに来ています。

「あともう一歩、がんばろう!」
プロジェクトチームのメンバーたちと励まし合いながら取り組んでいます。