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「コンレイとプティサエン」(後編)

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小山直行

因幡の白兎、桃太郎、ダイダラボッチなど、日本にはご当地伝説がいくつもあります。カンボジアにも誰もが知っている物語があります。
出張で初めてのコンポンレーン郡を訪れ、その中心部コンポンハウの町でスタッフと共に夕食をとった後でした。夜空の下で川面を渡って来る心地よい風を感じていると、プロジェクトマネージャーのチャンさんは、ここにあるコンレイ山にも伝説があるのですよ、と語り出しました。

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★このお話の前編をまだお読みでない方は、こちらからご覧ください。

                                                                     

「コンレイとプティサエン」(後編)

                                                                                                                                                     

                                                                                       

パオの子どもは、プティサエンと名付けられ、その名前が意味する通りの賢い男の子で、大切に育てられました。言葉をしゃべれるようになると、「お母さん、外に出てみたい」と懇願しました。パオの許しを得て外に出ると、知恵を働かせて世間の人々をやすやすと打ち負かし、母親と伯母たちのために食料を手に入れてきました。

そのような日が続くと、いつしかロタシット王にもプティサエンの賢さの噂が伝わってきました。

ロタシット王は賢い男子と評判のプティサエンを王宮に呼びました。王は彼を一目見るなり、自分の息子に違いないと察知し、すぐに王宮に上がって暮らすようにと言いました。

パオはサンタメアの行い、父親のことなど、これまでの出来事全てをプティサエンに聞かせて、息子を王宮に送りました。

プティサエンが立派な青年に成長するにつれ、鬼女サンタメアはいずれ復讐されるのではないかと不安になってきました。そこで再び魔法を使ってロタシット王を病気にかからせました。そして、王の病気を治すには、鬼の国にある「万病の薬」を手に入れなければならないと知らせました。

王はその使いにプティサエンを任じました。プティサエンは全てがサンタメアの企みであることを知っていたので、その役目を引き受け、母親と伯母たちの目を取り戻す旅に出ました。

鬼の国への使者として持参する手紙はサンタメアの魔力によって次のように記されていました。

「夜明けにたどり着いたら夜明けを喰え。宵に着いたら宵を喰え。」手紙の内容を知らないプティサエンは、鬼の国にいつ着いてもすぐに食べられる運命にあったのです。

旅の途中でプティサエンは仙人アイサイに出会いました。仙人は神通力をもって手紙の悪意を悟り、次のように書き換えました。

「夜明けにたどり着いたら夜明けと結婚せよ。宵に着いたら宵と結婚せよ。」

仙人はさらに空を飛ぶ馬を彼に贈ってくれたおかげで、鬼の国に難なく到着しました。

鬼の国に到着したプティサエンは番兵を通じて手紙をサンタメアに見せました。

鬼女サンタメアの娘コンレイは、親とは全く異なり純真で美しい乙女に成長していました。手紙を読んだサンタメアはコンレイの夫となるべき男性はプティサエンだと理解し、コンレイとプティサエンもまたお互いに惹かれました。かくして二人は夫婦となり、しばらく仲睦まじく暮らしていました。

もちろん、プティサエンのほうは当初の目的を忘れてはいません。コンレイが寝ている間に23個の眼球と屋敷にあった魔法の果物を手に取ると、空飛ぶ馬に乗って鬼の国から飛び立ちました。

これに気づいたコンレイは、愛する夫プティサエンと離れたくないとの一途な思いで追いかけてきました。「プティサエン、行かないで。神々よ、風よ、雲よ、愛しい彼を私のところに連れ戻して。」必死に呼びかけます。

プティサエン自身もコンレイには何の恨みもなく、一緒にいたいと思っていました。「母と伯母たちの目を治したらすぐに戻ってくるから待っていておくれ」と馬上から告げました。

                                                                                                                                                                                                                                      

コンレイに待つように告げるプティサエン(コンポンチュナン市)

                                                                                              

それでもコンレイは地上を追いかけてきます。

何とか立ち止まらせようと、プティサエンは魔法の果物を投げました。1つ目の果物は大きな山となり、コンレイの行く手を遮ります。それを越えてさらに追いかけてくると、2つ目の果物を投げました。大きな川になりました。これも渡って追いかけてきました。

3つ目の果物は、地面を真っ二つに裂きました。これ以上はどうしても追いかけることができなくなったコンレイは悲しみのあまり倒れてしまいました。

プティサエンは母たちの目を元通りに治した後、コンレイのところに戻りました。
しかし時すでに遅く、息を引き取っていました。

倒れたコンレイの身体は山となって今もコンポンレーン郡に横たわっているのです。

「ほら、対岸のコンポンチュナン市からコンポンレーン郡を望むと、山の起伏が女性の身体に見えませんか。これがこの土地の伝説です。」

チャンさんの話が終わりました。私たちがいるここはコンポンレーン郡中心部のコンポンハウという町。「コンポン」とは港を意味します。そして「ハウ」は「呼ぶ」。穏やかな夜風にのって遠くからかすかに呼び声が聞こえた気がしましたが、もちろん空耳でしょう。

こんな伝説があるコンポンレーン郡に、ぜひ皆さんもいらっしゃってみてください。

                                                                            

   横たわるコンレイ(コンポンチュナン市) 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

                  

コンレイ山。山の起伏が女性の身体に見える?

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