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カンボジア インターンシップ・レポ④ クルークマエ(伝統医療師)について

ブログを書いたスタッフ

#インターン・ボランティア

後藤日南

左から二人目がクルークマエの男性

こんにちは。東京外国語大学言語文化学部カンボジア語専攻2年の後藤日南と申します。8月29日からFIDRの小児外科支援プロジェクトにインターン生として参加させていただいています。

今回のブログではインターンの期間中にクルークマエに実際にお会いし、直接インタビューをする機会があったクルークマエ(គ្រូខ្មែរ)について紹介します。

まず、クルークマエについて簡単に説明します。クルークマエとはカンボジアの伝統医療師のことを指します。カンボジア語でクルー(គ្រូ)とは先生のことを表し、クマエ(ខ្មែរ)はカンボジアのクメール民族のことを表します。(余談ですが、カンボジア語では語末のRの子音は発音しないというルールがあるのですが、植民地時代、フランス語に転写する際に « khmer »と発音しないはずのRの音まで写してしまったため、日本語でもクメールという読み方になっているようです)

クルークマエとカンボジアに住む人々の生活との結びつきは地域によっては今も尚強く残っていて、現代的な病院よりもクルークマエの治療を好む、という人も存在します。

FIDRスタッフの皆さんとクルークマエの家を訪れたのですが、船に乗って移動する必要がある、入り組んだ道を進んだ先にやっと家に入れるなど、クルークマエの自宅はクラチェの中心地から離れたところにありました。

インタビューではクルークマエとして何をしているのか、現代の医療についてどう考えているか、現代の若者がクルークマエの治療を信じていない現状についてどう思うか、などについて質問しました。4人のクルークマエに同じ質問をしたのですが、どちらも現代医療を否定することはなく、病院に人々が行くことについても気にしていないということは共通しているように思えました。そしてどちらも現代的な薬局で買えるような包帯などの道具と伝統的な薬草や器具を合わせて治療を行っているという点も共通していたと思います。

クルークマエを一言で表すとしたら、「最後の砦」という言葉を私は思い浮かべます。お金が無くて病院にかかれない(実際はカンボジアでは貧困層のための無料の医療が存在します)、病院で治療してもらったけど上手くいかないなどといった状況にいる人々が最後の希望を託す先がクルークマエなのではないかと考えました。ある意味、人々の心の拠り所のような存在なのだろうと感じました。

そして彼らには弟子や後継はおらず、クルークマエというカンボジアの伝統的な医療は滅び行く伝統なのかもしれないということについても考えました。数十年後、クルークマエが滅びていたらカンボジアの医療にどんな影響があるのだろう?人々は病院を利用しようとするのか、それとも絶望してどこにもかからずに状態を悪化させてしまうのか?そのような疑問が頭を過りました。

病院で適切に治療すれば早く治る病気も、クルークマエの治療を受け、治療の経過を待っている間に悪化してしまうというケースも少なからず存在します。クルークマエにどのように歩み寄り、人々に医療を提供していくか考えていく必要があることを、身をもって感じることができました。

クラチェに到着して2週間程が経過し、毎日、日本では絶対に経験できないような貴重な経験をさせていただいています。そして、私自身のクラチェでの生活は数えきれないほどの多くの方の協力があってこそ成り立っているということを日々実感しています。支えてくださる方々への感謝の気持ちを忘れずに残りのインターン期間も有意義なものにしていきたいと思います。

                                                                                                                                                                                                                             

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