農業研修の「舞台裏」
乾季には農業用水の不足と冬の冷気のため、農業生産が困難となるソルクンブ郡ネチャサリヤン村とオカルドゥンガ郡チサングガディ村。年間を通じた農業生産を可能とすべく、FIDRが推進している農業用のため池とトンネルハウスの設置が完了した農家に対し、さらに農業生産性を高め、農作物の販売につなげるため、農業研修を実施しています。
研修では、地域の農業担当官らが講師となり、需要の高い農作物をオフシーズンに育てる方法や、地域で採れるハーブや家畜の糞尿を用いた有機的な肥料及び殺虫剤の作り方といった農業技術と、市場で販売する際に必要な作物選定のポイントや、販売仲介人や消費者との交渉術といった知識を伝えます。

収穫後の作物をどのような基準で販売用に選定するか説明する講師
下院総選挙が無事終わり、情勢が落ち着いた今年3月中旬、両村の計13区でこの農業研修を開催しました。今回は、これまで参加者からも村の行政官からも好評を得てきたこの農業研修がどのように準備・運営されているのか、ご紹介します。
農業研修を実施するために、まず講師を担当する農業担当官らと研修内容について検討します。過去3年にわたって実施してきた農業研修の参加者や関係者からの反応を踏まえ、より分かりやすく効果的な内容になるよう毎年少しずつ変更しています。
農業研修を各村で開始する前日には、講師を担当する農業担当官と、研修内容や研修スケジュールに関する最終確認のためのミーティングを行います。その際には、村長・副村長や総務部長といった村の管理部門の職員も参加し、研修をより良い内容にするためのフィードバックを得るのに加え、活動計画への積極的な参画を促すことでオーナーシップの醸成を図ります。このように研修本番まで、段階を踏んで内容を精査し、満足度の高い研修となるよう準備を進めます。

ソルクンブ郡ネチャサリャン村の副村長、総務部長、農業担当官らに農業研修の主旨を説明するグン職員(左)と杉田所長(左から2番目)

研修で配布するため池・トンネルハウスに関するパンフレットを確認する農業担当官ら
研修の準備・運営の裏では、現地パートナーNGOの職員が奔走しています。
彼らは前日に各農家へ一軒一軒電話で参加可否を確認し、研修の場所・時間をリマインドして開始時間に間に合うように来てもらえるよう働きかけます。というのも、研修場所は各区内の農家の方々が徒歩で来られる場所に設定しているものの、山岳地域であるため、中には1時間~2時間ほど歩いて会場にたどり着かなくてはならない方もいます。普段の農作業もある中、時間に間に合うように家を出てもらうためには、事前のリマインドは欠かせません。
また、当日は配布資料を準備したり、参加者登録をおこなったり、議事録を作成したり、休憩時間には軽食を配布したり…と、スムーズに研修が進行するようFIDR職員や農業担当官と協力しています。

参加者登録のため、一人ひとりの名前を聞くパートナーNGO職員(中央)

今回、13日間にわたっておこなわれた研修に参加したのは、2025年度に農業用のため池とトンネルハウスをつくった農家約517名でした。
講師の説明は、写真や図をたくさん用いた視覚的にもわかりやすく、自らも農業をおこなっている講師が自身の経験も交えたもので、参加者は身を乗り出して聞く場面も多くありました。さらに、参加者全員の自己紹介から研修を始めることや、参加者の経験・質問を聞きながら進行すること、参加者が実際に肥料/殺虫剤を作る時間を設けることなど、ただ聞くだけではなく主体的に参加してもらう工夫もなされていました。

参加者が持ち寄ったハーブを使って有機的な肥料/殺虫剤を作るデモンストレーション
今回も、参加者・行政からの好評を得た農業研修。
その裏側には、「より良い研修の実現」という共通の願いに向けた、地域の行政官との厚いパートナーシップ、現地パートナーNGOスタッフのきめ細やかな働きがありました。