命を救う「速さ」と「正確さ」を支える新しい超音波診断装置―クラチェ州病院にもたらした変化とは―
FIDRが活動する カンボジア北東部のクラチェ州。州内を流れるメコン川に面した農村には、多くの人々による生活の営みがあります。住民たちの日々の暮らしを支え、地域の安心を守るために、クラチェ州病院は長年にわたって医療を提供してきました。そして州病院は、同地の総合病院として、地域の人々から大きな信頼を得ています。

州病院の正面入口にて
ですが、かつての外科病棟では、必要な検査をすぐに受けられないことがありました。検査装置をほかの診療科と共用していたため、患者さんは別の病棟まで移動し、順番を待たなければならない場合があったのです。こうした状況は患者さんにとって負担となり、特に緊急時には対応が遅れてしまうこともありました。より迅速で、しかもより正確な診断を行うためには、外科専用の機器が必要とされていました。
この課題に応えるため、FIDRは、外科病棟に超音波診断装置を導入しました。この装置によって医師たちは、患者さんの臓器や組織の状態を、その場ですぐに画像として見ることができます。その結果、診察の待ち時間の短縮はもちろん、診断の速さと精度がより向上しました。特に緊急時に、その効果を発揮しているのは言うまでもありません。


州病院に導入された超音波診断装置
この新しい装置が、州病院の診察時にどのような変化をもたらしたのか。医師と患者さんに話を聞いてみました。
外科部長のチャン・ソクンチェンダー医師は、新しい装置の導入が1つの転機になったと語ります。
「外科病棟で使える装置があるおかげで、診断から治療までの流れが格段に良くなりました。また以前のように、患者さんが検査のために他の診療科まで移動する必要がなくなりました」
また装置の性能の高さにも驚いたと言います。
「新しく導入された超音波診断装置は操作が簡単で、鮮明な画像を瞬時に映し出してくれます。肺や腹部に溜まった水、内出血、腫瘍などをすばやく見つけることができ、患者さんの状態を正確に把握するのにとても役立っています」
外科副部長のヒム・ソヴァンダラ医師は、診療時の効果について話をするだけでなく、病院スタッフ間の連携にも変化が生まれたといいます。
「診療科を超えた連携が深まったように感じます。産婦人科、小児科、救急、内科の医師たちも、外科に設置された新しい超音波診断装置を使用しに来ることがあります。画面を見ながら、医師たちが意見を出しあい、診療科を超えて治療方針を決定するようになりました」
このように新しい装置の導入は、医師同士の協力を促進し、患者さんの状態にあわせたより適切な治療方針を導く助けとなっています。


超音波診断装置の画像を見ながら治療方針を話しあう医師たち
クラチェ州に住む二エムさんは、腹痛を訴える息子を連れて州病院を訪れた際の経験を話してくれました。
「先生が画面を見せながら、息子のおなかの中で何が起きているのかをわかりやすく説明してくれました。そのおかげで、腹痛の原因を自分の目で見て理解することができ、安心しました。以前は治療の内容が分からず不安で、病院に行くことをためらっていましたが、今は、先生の診断や治療を信頼しています。家族や近所の人たちにも、病気のときはクラチェ州病院を受診するように勧めています」

クラチェ州病院を受診した男の子が超音波検査を受ける様子
診断内容の説明時にも、スクリーンに表示される画像を活用します
超音波診断装置の導入は、患者さん一人ひとりに適切な治療を提供するだけでなく、診断の待ち時間の短縮や、高額な費用がかかる個人クリニックや都市部の病院への転院の減少にもつながっています。
FIDRはこれまで、病棟の建設、医療機器の導入、医療スタッフへの研修、住民の健康意識向上など、長期にわたってクラチェ州病院を多面的に支援してきました。今回の装置の導入は、これまで地域の暮らしを支えてきたクラチェ州病院に、新たな力をもたらしました。そして、この取り組みが、これからも地域の人々の健康と安心をさらに支えていくことにつながっています。
引き続きFIDRは、医療スタッフや患者さんの声に耳を傾け、地域の人々に信頼される医療体制の実現を目指して、支援を続けてまいります。