日本の病院から学んだ、患者さん第一の医療サービス
FIDRがカンボジアで実施している小児外科支援プロジェクトは、クラチェ州立病院を中心として、カンボジア北東部の人々が必要な医療を受けられるように活動しています。
2025年11月には、クラチェ州立病院の院長を含む医師3名を日本に招いて視察研修を実施しました。
研修の大きな目的は、医療サービスの質の向上や運営体制強化の視点から日本の医療現場を視察し、クラチェ州立病院で実践できる具体的な取り組みを見つけること。そこで、戸塚共立病院、昭和医科大学病院、昭和医科大学江東豊洲病院、埼玉県立小児医療センターの各施設を見学し、医師・看護師の方々からお話を伺いました。

各病院を見学する中で、クラチェ州病院の医師たちは、日本の病院の高度な医療機材や情報管理システムに圧倒される一方、州立病院でもすぐに実践できる取り組みがあると感じました。
第一に、患者さんについての情報共有の徹底です。
訪れたすべての病院では、定期的な情報共有を通じて、患者さんの情報をすべての医師・看護師が把握していました。それを実現している日本の「チーム医療」のメリットについて、ヘン・ソコン院長はこう話します。
「チームで働くことで、より良い治療方針に向けて話し合うことができ、緊急の場合に担当ではない医師でもすぐに対応できるので、とても良いと思いました。私たちも情報共有と意見交換の場を作りたいです。」
第二に、重大な医療事故を防ぐための体制や日々の取り組みです。
視察したどの病院でも、「人間は間違える」という前提のもと、大小にかかわらず間違いの報告やダブルチェックを徹底していました。
ヒム・ソヴァンダラ外科副部長は、手術器具を適切に管理する体制づくりに役立てたいと感じていました。
「手術前に必要な個数の器具を準備して、手術中に足りなくて取りに行ったり、壊れていて使えなかったりすることがないように改善したいです。医療資材や器具の個数管理やメンテナンスの仕組み作りが必要だと感じました。」
第三に、病院の衛生状態を保ち、病院内の感染防止に加え、患者さんやその家族が過ごしやすい環境を作ることです。
ルイ・スライレアック小児科部長は、日本の病院の清潔さに驚いていました。
「日本ではお見舞いに来る人の出入りがあっても気になるにおいが全くありませんでした。カンボジアではお見舞いに来た家族が病室で食事をしたり、床で寝たりしています。また、人数の制限がないため、一度に多くの人が病室に入ることもあります。面会の時間やルールを決めて、病室の衛生状態をよくしたいです。」
今回の病院視察はカンボジア人医師たちにとって、「患者さんを一番に考えた医療」の大切さを学ぶ貴重な機会となりました。そして、これからの決意として「Work with Heart!」(患者さんのことを一番に考えて、医療サービスに取り組むぞ!)と語ってくれました。
FIDRは、参加した医師たちが視察での気付きを州病院での実践につなげていけるよう、今後も彼らと共に活動を続けていきます。

最後の振り返りでは、付箋を使って視察での気付きを共有・整理