ふりかけコンペティション―地元食材と知恵で広がる「つながり」の輪―
カンボジア・コンポンチュナン州のなかでも特に貧困率の高いコンポンレーン郡では、農村開発の取り組みの一環として「ツナグ」プロジェクトを進めています。
このプロジェクトでは、FIDRの法人賛助会員であるニッシントーア・岩尾株式会社様(以下、NTI社)と協力しながら、地元の川魚を使って家庭で作った「ふりかけ」を地域に広めています。売ることで日々の暮らしを支える副収入になり、食べることで誰もが健康になるように、ふりかけをきっかけに地域の人々が「つながっていく」という願いが込められたプロジェクトです。
これまで、地域住民の皆さんに「ふりかけ」を、より身近に感じてもらえるよう様々な活動を行ってきました。試食会では多くの方々に味を知ってもらい、調理教室では家庭で作れるレシピと作り方を学んでもらいました。給食がある小学校でも試験的に提供して、子どもたちにとっては新たな食文化との出会いとなりました。商品化にもたどり着き、地元の幾つかのレストランで販売が始まり、商業化に向けた1歩目を歩みだしました。
これらの活動を通じてちょっとした話題にはなったものの、カンボジアの人々にはなじみの薄い「ふりかけ」を幅広く知ってもらい、多くの人々に買われるような地場産品へと育つにはどうしたらよいか。認知度を高める新たな取り組みを模索する中、NTI社の発案で、活動地区の生産者がそれぞれチーム(合計3つ)を作り、お手製のふりかけを作って披露する「ふりかけコンペティション」の開催が決まりました。もちろん、カンボジア初の試みです。
※「ふりかけ」プロジェクトのこれまでの経緯についてはこちらをご覧ください。
ですが、「コンペティション」といっても、一番を競い合うことが目的ではありません。それぞれの地区でアイデアを出し合いながらレシピ作りに取り組むなかで、「もっとこうしたらおいしくなるかも」、「この具材も使ってみよう!」といった工夫や挑戦が生まれることを期待しました。3チームが切磋琢磨して、世界に一つしかないオリジナルふりかけを各々生み出して、多くの人に食べてもらうことが、このイベントの狙いです。
各チーム、何度も何度も試作を重ねた末に迎えた2025年3月15日。
国内初、ふりかけコンペティションの本番です。
小エビやモリンガ(栄養豊富で健康食品として注目される野菜)など、各チームが地元ならではの素材を活かしたオリジナルレシピにたどり着き、努力の結晶である唯一無二の「ふりかけ」全3種類が披露されました。当日は、コンポンチュナン副州知事や、各地区の住民や学校の先生たちなど計71名が来場し、さらには全国放送のメディアも入るなど、「ふりかけ」という食品への関心の高さがうかがえる機会となりました。
ふりかけの材料である燻製した魚や野菜
会場で調理されたできたてのふりかけを、参加者全員が順に試食して、一番美味しかった「ふりかけ」に投票することとなりました。評価が前の味付けに左右されないよう、試食後は必ず水で口をゆすぐことや、栄養面からの食材のチョイスはもちろん、生産者が衛生面に配慮しているかも参加者は厳しく判断しながら思い思いに一票を投じました。
各チームとも、レシピ以外の工夫にも余念がありません。おそろいのエプロンを用意していたり、チーム名やメンバーの写真を丁寧にデザインした看板を作ってきたりと、いつの間にそんな準備を!と主催者側が驚くほど、皆さん気合と遊び心にあふれていたのが印象的でした。普段、何かを人前で披露する機会はほぼありませんが、テレビカメラも入り、いざ自分が主役となると照れながらも嬉しそうに、オリジナルふりかけの特徴を活き活きと説明する生産者の皆さんを見て、これまでの紆余曲折を一緒に体験して、彼らの話を聞き、寄り添いながら励ましてきたFIDRスタッフは誰もが報われた気持ちになりました。
地元の郡長へふりかけを盛り付けるサムロンセン地区グループ
僅差ではありましたが、優勝したのはサムロンセン地区のグループでした。メンバーは「初めてふりかけの話を聞いた時、『食材をいくつも組み合わせるのは難しそう』と感じましたが、チームで協力して試作を何度も重ねた結果、美味しくて体に良いふりかけを開発することができました。地元の魚や野菜を使った『ふりかけ』は、栄養への関心を高めるだけでなく、地域の活性化にもつながると考えています。『自分たちの手で地域をより良くしたい』という思いが、活動の原動力です」と語ってくれました。
関係者や参加者の尽力により、無事に終えることができたふりかけコンペティション。この様子はテレビやSNSなどで広く報道され、ふりかけの認知向上と商品化に向けた大きな一歩となりました。
全国放送のニュース映像