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16年間の農村開発プロジェクトで何が変わったか

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農民組合の運営メンバーとFIDRスタッフ

カンボジアでは、貧困層の約9割が農村部に暮らしており、生計基盤である農業の生産性の低さや、保健・栄養に関する知識・習慣に大きな課題があります。FIDRは全国の中でも特に貧困割合が高いとされるコンポンチュナン州内の3郡で、2007年より20233月まで3つのフェーズにわたる「農村開発プロジェクト」を実施しました。ここでは、2017年度から7年間にわたり6187世帯(約25,000人)を対象に実施した活動の成果をご報告します。

 

1.農業生産がレベルアップ

現地では大半の農家が米作りに従事しています。FIDRのプロジェクトを通じて、従来の栽培法よりも23倍の収量が得られるSRI農法を導入した農家は4,089世帯にのぼりました。FIDRは様々な野菜を自家栽培することも推奨し、家庭菜園に取り組んだのは4,429世帯、養鶏を実践するようになった4,503世帯は肉や卵の自給のみならず現金収入の拡大にもつながりました。

 

2.乳幼児の栄養状態が大きく改善

生後半年後あたりからの子どもの栄養状態が低下するのは、乳幼児にふさわしい食事に関する知識と実践が欠けているためです。FIDRは母乳で不足する栄養を摂るための「補完食」を紹介し、その作り方を指導しました。この補完食を実践する世帯は、2017年からの対象地域では、3.5%から67%に増加し、2019年から新たに対象とした地域でも、13.4%から62.5%に増加しました。5歳未満児の栄養不良率でみますと、2017年からの対象地域では、27.5%から18.8%に、2019年からの地域でも、32.7%から22.7%と、約10ポイントの減少が実現しました。

 

3.地域の自立発展を率いる農民組合の設立

この地域で将来にわたり農業生産力と収入の向上や生活の改善をリードするのが農民組合です。FIDRはプロジェクトを通じて現地の人々のリーダーシップや経営力、ネットワークの強化を図りました。その結果、農民組合を2地区で設立することができ、地元のリーダーたちが中心となって課題を解決し、発展を牽引していくための体制が整いました。両組合とも、地元の農産物を恒常的に販売できるようになったばかりでなく、国連世界食糧計画(WFP)の支援でコンポンチュナン州で実施している学校給食用の農産物を納入する年間契約を結んだことは、作物の品質の高さ、安定した供給力、組織的な経営力が認められたことを物語っています。

 

4.点から面への広がり

2007年に始まった第1フェーズでは、わずか5つの村の2,800人を対象とした試験的な活動でした。その成果をもとに2012年からの第2フェーズでは3925,600人に拡大し、農業生産、栄養と保健衛生、組織強化、の3本柱での活動を着実に地元の人々の力で実行できるようにしました。ここで能力を高めた人々が、2017年からの第3フェーズで新たに展開した地域でロールモデルとなり活躍しました。収入の向上や生活の改善はFIDRのプロジェクトが終了しても地元の人々で続けられる営みです。FIDRが「教える」のではなく、現地で「受け継がれ」「発展していく」という仕組みが作られたことこそが、これまでの16年間の取り組みの最も重要な成果と言えるでしょう。2023年度から開始したコンポンチュナン州コンポンレーン郡での農村開発で、この成果をさらに活かしていきます。

 

これまで、本事業に携わった全ての方々に、心より感謝いたします。

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農民組合研修での一コマ。この村にはどんな資源があるだろう?の地図。

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