病院と地域をつなぐ「エコートレーニング」
FIDRは2017年から、カンボジアのクラチェ州病院を中心とした小児外科支援プロジェクトを実施しています。これまで同病院を中心に、医療人材の育成や診療体制の強化に取り組んできました。外科医や看護師への技術研修、手術機器の整備などを通じて、州病院ではこれまで難しかった症例にも対応できるようになりました。
ですが、病院の診療技術が向上しても、農村部に住む多くの人々は、受診が必要な症状について十分な知識がなく、症状が悪化するまで病院を訪れないという課題があります。そこでFIDRは、保健センターや地域での啓発活動を通じて、早期受診を促す活動を実施しています。
その一環が「エコートレーニング」です。
このエコートレーニングでは、まずクラチェ州病院の医師たちが講師となって保健センター職員たちに小児外科疾患の基礎知識や対応方法を教えます。次に、その保健センター職員たちが、各村の保健ボランティアに対して、症状の見分け方や応急的な方法について教えます。そして今度は、保健ボランティアが村に戻り、地域住民に正しい知識や医療機関を早期に受診する大切さを伝えます。このように、医師から保健センター職員へ、そして保健センター職員から保健ボランティアへと知識を伝え、最終的に地域住民へ正しい医療知識を届ける仕組みです。その学びが、こだま(エコー)のように地域全体へ広がっていくことを目指しています。
住民の医療機関への受診の鍵を握るのが、保健ボランティアです。各村に2名ずつ配置されており、地域住民にとって一番身近で相談しやすい存在です。ですが、医療の専門職ではありません。そこでFIDRはクラチェ州病院の医師たちと協力して、難しい医療用語をやさしい言葉や写真で説明した研修資料やポスターを作成しました。
2024年から始まったエコートレーニングを通じて、現在地域住民の間に「病院を受診すれば治癒できる」という理解が少しずつ広がっています。
エコートレーニングに関わる保健スタッフからは、その意義を実感する前向きな声が多く寄せられています。
ある保健センター長からは、研修をサポートしてくれるクラチェ州病院への感謝の声が寄せられました。また講師を務めた保健センター職員のソー・ティアレットさんは「今までは小児外科の症状についてあまり知りませんでしたが、今は自信を持って保健ボランティアに伝えられます。人前で話すことにも慣れました」と話してくれました。

保健ボランティアの方からも同じような声があがっています。多くの保健ボランティアは、40km以上離れた場所から研修に参加してくれます。そのうちの1人のチェン・ブロさんは「道路の状態が悪く、研修に来るのは大変でした。それでも知識を身に着けたいと思いました。村に戻り、症状がある子どもを見たら、自信を持って保健センターや病院の受診を勧めます」と私たちに語ってくれました。

研修を受けるプロさん
他にも「この疾患を持つ子どもを村で見たことがあります。地元の医療機関で治せるとは思っていませんでした」と話す保健ボランティアもいました。
このようにエコートレーニングは、地域住民と病院をつなぐ架け橋です。病院から離れた地域に住む人々が、適切なタイミングで医療機関を受診し、必要な治療を受けられるよう、FIDRは今後も子どもたちの健康を守る体制作りを進めていきます。