伝統文化を輝かせ、自信を育むイベント出店
FIDRベトナム事務所があるダナン市や近隣の古都ホイアンは、近年、国内外から観光客が多く訪れる、ベトナム中部の一大観光地になっています。このダナン市やホイアン等で、この数年、FIDRが支援している山岳少数民族の人々がイベントに参加する機会が増えています。イベントで民族舞踊の披露、伝統料理や特産品の紹介・販売を行うことで、地元の人々や観光客と直接触れ合うことは、彼らが自分たちの文化を誇りに思い、自信を高めることにつながっています。
代表的なのは、ダナン市で月一回に開催される「カトゥ-ナイト」です。2017年にはじまり、今では恒例となったこのイベントでは、山岳少数民族の1つであるカトゥ-族が伝統的な料理や農産物をダナン市民に紹介します。お客さんは、ちまきやチキンの丸焼き、肉の串焼きなど、山椒を使ったカトゥ-族独自の料理をその場で食べたり、テイクアウトしたりすることができます。
最近では同じく山岳少数民族の1つであるカヨン族による「カヨンナイト」も新たに始まりました。まだ不慣れなところがありますが、お客さんと直接交流できたカヨン族の人々は、笑顔に溢れていました。
「カトゥ-ナイト」でお客さんに伝統料理を紹介するカトゥ-族の女性(中央)
次に、ダナン市で毎月中旬に開催されるファーマーズマーケットへの出店です。ここでは、少数民族の人々がクァンナム省の山岳地で採った無農薬で旬の野菜や果物、鶏肉、はちみつなどを紹介・販売します。お客さんの大部分であるベトナムの主要民族キン族の人々にとって、これまであまり接点がなかった少数民族と話したり、彼らの育てた農産物を購入したりすることは貴重な体験で、リピーターがどんどん増えています。さらに、SNSを通じてお目当ての産物を事前発注するお客さんも現れるなど、少数民族とお客さんとのコミュニケーションがより深まっています。
またダナン市、ホイアン旧市街で毎年開催される日越文化交流イベントや、リゾートホテル等で開催されるイベントにも、少数民族の人々は積極的に参加しています。イベントでは、世界中から訪れるお客さんたちに、少数民族の伝統織物の展示・販売、伝統料理の調理・販売を行うほか、伝統衣装を身にまとって民族舞踊を披露しています。
はじめは恥ずかしさや不安を感じていた少数民族の人々でしたが、さまざまな国から来たお客さんと交流するうちに、どんどん自分たちの伝統を誇りに思えるようになり、堂々と伝統文化を紹介するようになりました。
彼らにとって特産品や農産品等の販売による収入は、単なる経済的な利益に留まりません。産品が市場に受け入れられることで、作り手である自分たちの努力や価値観が認められたと感じることができ、自信をさらに高めています。
これからもイベントを通じて、少数民族とキン族、外国人観光客の間で交流が進むことで、少数民族の伝統文化がさらに輝きを増し、彼らの自信も一層育まれていくことでしょう。