FIDR(ファイダー)は、開発途上国の子どもたちの支援と緊急援助を行う、国際協力NGOです。

プロジェクトの今 - カンボジア小児外科支援

2016年06月13日

20年間のプロジェクトをふり返って【3】<br>~医療従事者の教育体制づくり~

20年間のプロジェクトをふり返って【3】
~医療従事者の教育体制づくり~

1996年から、カンボジアで初めて小児外科医療の立ち上げとその発展に取り組んできた「カンボジア小児外科支援プロジェクト」は、2015年度が第4フェーズの最終年度でした。20年の節目を迎え、これまでの取り組みの成果を測るため、専門家によるプロジェクト評価を行いました。その結果、カンボジアにおける小児外科の診療体制が築かれた、また、小児外科診療を行う医療従事者の教育体制を整えることができたという成果が認められました。これらの成果と課題について、3回にわたりご報告します。
3回目となる今回は、小児外科診療を行う医療従事者の教育体制を整えたことについてです。


本プロジェクトを開始した1996年は内戦終結後間もなく、カンボジアに「小児外科」を専門とする医師も、「小児外科」の医療者を育成できる人材は存在しませんでした。そこでFIDRは、10年にわたり国立小児病院(NPH)に外国人医師や看護師を派遣し、職員を直接指導することで、小児外科をリードできる人材の育成に注力しました。
今回の評価では、この間に技能を高めたNPHの医療従事者が後進を育てる仕組みをFIDRが整えたことが認められました。

2006年、FIDRは、NPH外科医が地方病院の医師を育成する「小児外科研修」を始めました。NPHの医師が講師となり、理論と実技の両面から指導するこのプログラムは、カンボジア保健省の承認のもと、国立医科大学の正式な「小児外科卒後研修」として認定されました。また、2011年には、NPH麻酔科医や麻酔看護師を講師とし、地方病院の麻酔科職員を育成する「小児麻酔研修」も開始しました。

医学の発展を外国からの支援と指導に求めてきたカンボジアにおいて、カンボジア人が講師となる両研修は画期的でした。母国語での指導という利点は言うまでもなく、子どもたちを救いたいという想い、社会的・経済的な制約の認識などを共有する、この国の人々を主体とした教育体制の始まりだったのです。

当初2年のプログラムだった「小児外科卒後研修」は、現在FIDRの支援を離れ、カンボジア保健省のもとで4年のプログラムに格上げされ実施されています。また、「小児麻酔研修」には、評判を聞いた国立病院や私立病院など、地方病院以外からの麻酔科職員の参加も増え、保健省から高く評価されています。「カンボジア人医療従事者の手で後進を育成する」体制が、着実に根付いてきました。

前回までに述べた、「カンボジアにおける小児外科診療体制の構築」という成果は、外国からの支援や特定の人材によってのみ可能なようでは、持続的とは言えません。最前線で活躍する医療者が次世代を育てることで、今よりも強力な診療体制を築いていかなければならないのです。この意味で、本プロジェクトにおけるふたつの成果は、カンボジアにおける小児外科医療発展の両輪と言えるでしょう。

FIDRは今後、地方における小児外科の診療能力の充実を図っていく予定です。カンボジアの子どもの未来のために、引き続き貢献できるよう努めていきます。

2016年05月23日

20年間のプロジェクトをふり返って【2】<br>~地方における小児外科診療体制の構築~

20年間のプロジェクトをふり返って【2】
~地方における小児外科診療体制の構築~

1996年から、カンボジアで初めての小児外科医療の立ち上げとその発展に取り組んできた「カンボジア小児外科支援プロジェクト」は、2015年度が第4フェーズの最終年度でした。20年の節目を迎え、これまでの取り組みの成果を測るため、外部の専門家によるプロジェクト評価を行いました。その結果、カンボジアにおける小児外科の診療体制が築かれたこと、また、小児外科診療を行う医療従事者の教育体制を整えることができたという成果が認められました。これらの成果と課題について、3回にわたりご報告します。

2回目となる今回は、地方における外科診療体制の構築についてお話しします。

FIDRが首都プノンペンにある国立小児病院(NPH)外科の支援を開始して10年が経過した頃、NPH外科が目覚ましい発展を遂げる一方で、地方における小児外科の遅れが目立っていました。各州の医療拠点である州病院でも、ほとんど小児外科手術が行われていなかったのです。

今回のプロジェクト評価では、FIDRが地方の小児外科診療の発展を目指して行ってきた様々な研修を受けて、州病院の外科および麻酔科職員の知識や技術が向上したことが認められました。

2006年、FIDRは保健省の認可のもと、NPHと共同で、州病院の外科医の小児外科診療技術を向上させるための研修を開始しました。技術を高めた外科医が州病院で子どもの手術を行うためには、適切な小児麻酔の施術が必要です。そこで2011年からは、州病院の麻酔科看護師に対して、小児麻酔に関する研修も始めました。いずれも、NPHの医師や看護師が講師となり、NPHにて州病院の職員に講義や臨床研修の指導を行うものです。

この10年で、18州の州病院の外科医27名および麻酔科看護師27名が、知識と技術を習得し、所属先の州病院に帰任しました。現在では、年間300件を超える小児手術を行えるようになった病院や、先天性奇形をもった新生児患者の手術を行った病院もあり、非常に大きな進歩です。また、研修修了生の働きかけにより、小児患者専用の診察室や術後の小児患者のための病室が設置されるなどした州病院もあります。手術だけではなく、周術期の患者のケアまで考慮できるようになったことは、小児外科の包括的な取り組みが地方にまで浸透してきたことの証です。
一方でプロジェクト評価では、州によっては、外科医や麻酔科看護師が研修で学んだ知識や技術を効果的に発揮できていない場合もあることが指摘されました。的確な診断・治療を行うための技術を地方に定着させるためには、さらなる取り組みが必要であることが明らかとなり、今後の課題としてとらえました。

次回の記事では、「小児外科診療を行う人材を育成する教育体制の構築」についてお話しします。


※写真:小児外科の研修を修了した地方病院の医師(写真左)学んだ技術を活かし診療しています

2016年05月18日

20年間のプロジェクトをふり返って【1】<br>~国立小児病院における外科診療体制の構築~

20年間のプロジェクトをふり返って【1】
~国立小児病院における外科診療体制の構築~

1996年から、カンボジアで初めての小児外科医療の立ち上げとその発展に取り組んできた「カンボジア小児外科支援プロジェクト」は、2015年度が第4フェーズの最終年度でした。20年の節目を迎え、これまでの取り組みの成果を測るため、外部の専門家によるプロジェクト評価を行いました。その結果、カンボジアにおける小児外科の診療体制が築かれたこと、また、小児外科診療を行う医療従事者の教育体制を整えることができたという成果が認められました。
そこで、これらの成果と課題について、3回にわたりご報告します。

今回は、首都プノンペンにある国立小児病院(National Pediatric Hospital/NPH)における外科診療体制の構築についてお話しします。

FIDRが支援を開始した1996年当時、カンボジア国内で小児医療を提供していたのは、国外からの支援により診療を再開したNPHのみでした。そのNPHにも外科部門はなく、国内に小児外科医療を提供できる病院は存在しませんでした。今回の事業評価では、まず、NPHにおいて新生児手術にも対応できる診療体制が整ったことが評価を受けました。わずかな人材と設備で発足したNPHの外科部門は、今では50名の医師・看護師を有し、年間1600件の手術を行えるまでになっています。また、24時間の看護体制や、新生児手術を担う医療チームが実現しています。

FIDRは、NPHにおいて外科部門設立のための支援を皮切りに、入院病棟や手術室の建設、医療機材の配備、医師や看護師の育成など、20年掛けて小児外科の診療体制の構築を進めてきました。この間に、NPHの外科医たちは、形成外科、整形外科、腹腔外科などそれぞれの専門領域における技能を磨きました。さらに、鎖肛や食道閉鎖などの生後間もなく手術が必要な、重篤な先天性疾患をもつ新生児の治療もできるようになり、子どもの死亡率低減に寄与しています。一時的な医療の提供ではなく、現地に腰を据えて、中長期的な視野で技術移転を行い、カンボジア人医師を育てたことは、専門家から高く評価されています。

評価に際し、NPH外科に入院した患者の家族170名にインタビューをしたところ、91%の人が「NPH外科で受けた治療の結果に満足している」、97%の人が「親戚や知人の子どもに外科患者がいたら、NPHでの受診を勧めたい」と答えるなど、今ではNPHが小児外科医療を提供する病院として、厚い信頼を得ていることも確認できました。

次回は、「地方における小児外科診療体制の構築」についてお話しします。

2016年04月28日

20年の支援成果をふり返る催しを実施

20年の支援成果をふり返る催しを実施

4月8日、FIDRが20年間継続してきた「カンボジア小児外科支援プロジェクト」の成果をふり返る催しを行いました。

当日は日本をはじめ、これまで本プロジェクトに関わったカンボジア国立小児病院と地方病院の医師と看護師、あわせて114名が参加しました。

催しでは本プロジェクトアドバイザーの岡松孝男理事(戸塚共立第1病院在宅医療部長)や、カンボジア国立小児病院及び地方病院の医師が、本プロジェクトを通してのカンボジア小児外科医療の発展について報告しました。

立場や専門領域の違う発表者からの異なる視点での報告は、プロジェクトにたずさわった全員が「カンボジア小児外科医療の発展」というひとつの目標に向かってこの20年を進んできたことを感じさせるものでした。

この催しが、1996年から20年にわたる本プロジェクトの取り組みを振り返る機会となるだけでなく、カンボジアにおける小児外科医療の新たな飛躍への一歩となることを祈っています。

最新の記事